工業簿記は製造業を想定した簿記です。
製品を作ってお金をもうけるためには,製品を作るためにかかったすべての費用を,適切に計算する必要があります。
工業簿記では,製品を作るためにかかった費用(製造原価)を計算するのがざっくりとした目標になります。
製造原価=材料費+労務費+経費
机を作ることを考えてみましょう。
- 材料費=直接机になる材料…木材,接着剤,釘にかかる費用
- 労務費=机を作る人の賃金・給与
- 経費=電気・ガス・水道代など,材用費と労務費以外
*また,それぞれの費用は,製造直接費と製造間接費に分けられますが,これについては,別のページで説明します。
*このページでは,全ての材料,労務,経費が机を作るためだけに使われたと仮定します。
原価計算のための仕訳 材料費
材料を購入した時の仕訳
材料を購入したときは,簿記3級と似た処理をします。
(例)机を作るための木材1,000円分を掛けで購入した。送料100円は現金で支払った。
*()内は勘定科目の分類です。仕訳問題の解答には書かないでくださいね。
簿記3級の時と違うのは,「仕入(費用)」が「材料(資産)」になったことですが,借方に置くのは同じです。
材料が資産となるのは,いずれ製品として,売れる価値のあるものになるからと考えます。
材料を使って製品を作り始めた時=材料を消費した時の仕訳
工業簿記も商業簿記と同様,やることは算数です。
ここから先,「材料」→「仕掛品」→「製品」→「売上原価」というように勘定科目が変化していきます。
それに伴って,使ったものを右(貸方)へ,右へと送っていく,というイメージです。
(例)先ほど購入した「材料」のうち,500円分を,全て机を作るのに使ったとします。
そうした場合,「材料」のストックから500円分が無くなりますので,「材料」から引き算するために,先ほどの借方とは逆に,貸方に置きます。
では,材料を使って作り始めたもののことを何と呼ぶかというと,「仕掛品(資産)」と呼びます。
仕掛品もいずれ製品となりますから,資産です。
四角の中には「仕掛品」と入れます。
完成した時の仕訳
製造工程が全て完了したら,「製品」に変わります。
原価計算のための仕訳 労務費
賃金や給料を払ったときは,簿記3級の時と同様に処理します。
賃金は工場で製品の製作をしている人に支払う費用,
給料は工場で事務仕事等をしている人に支払う費用のことです。
(例)Aさんの当月の賃金は10,000円で,このうち,源泉徴収額1,000円と社会保険料500円を差し引いた額を現金で支払った。
材料費と同様,「賃金」→「仕掛品」→「製品」と変化していきます。
(例)Aさんは1ヶ月間,勤務時間中,机の製造だけを行った。
「仕掛品」は,最終的には「製品」となります。「賃金」から「製品」になる金額は以下のようになります。
原価計算のための仕訳 経費
このページでは,製品を作るために特許権使用料を支払うことを考えます。
特許権使用料は,経費に分類されます。
(例)製品を作るために,特許権使用料10,000円を現金で支払った。
その後の流れは,材料費,労務費と同様で,右へ右へと流して,製品にします。
このように,工業簿記では,材料費,労務費,経費の3つを,右へと流して,仕掛品,製品に変えることが基本となります。
次回は,「これらの費用,すべて机を作るわけに使うわけじゃないよね。机を作る以外にも使った場合はどうするの?」という,当たり前の指摘にお答えしようと思います。
次回,直接費と間接費について,です。
コメント